午前Ⅱ(論文)対策。実際の問題を使って、解法の流れを確認していきます。今回は令和4年(20222年)の秋試験から、プロマネ午後Ⅱの問1でやってみます。
こんにちは!セイジュン@エンジニア応援隊(@39Seijun)です。論文の解法については、こちら午後Ⅱ対策でまとめました。前回まで、令和3年(2021年)の午後Ⅱ問題で論文プロット作成を行ってみましたが、今回から令和4年(2022年)の問題でやってみます。皆さんの学習の参考(半面教師)になりましたら。問の本文は、こちらIPAサイトをご参照ください。
問1です。タイトルは「システム開発プロジェクトにおける事業環境の変化への対応について」です。プロジェクトマネージャにとって目の前にある開発プロジェクトと、その上位概念である所属企業、あるいは事業全体の環境変化という関係を問う問題です。高度情報処理技術者らしい問いかけですね~。
問の本文は省略します。公式サイトでご確認ください。
さて、いつも通り、先に設問ア~ウを抜粋、確認していきましょう。
設問イ 設問アで述べた計画変更の要求を受けて策定した、機会を生かす対応策、脅威を抑える対応策、及び確定させた計画変更の内容について、800字以上、1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ 設問イで述べた計画変更の実施の状況及びその結果による事業環境の繁華への対応の評価について、600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
さて、問の本文を読む前に、論文の骨組み(プロット)を、設問ア~ウに沿って作成してみましょう。設問での文字数指示から凡その文字数も補記してみます。
1.私が携わったシステム開発プロジェクトの概要と目的・・・設問ア(800字以内の指示に応える)
1.1.プロジェクトの概要と目的(400字)
1.2.計画変更の背景となった事業環境の変化(200字)
1.3.外部ステークホルダーから受けた計画変更の要求の内容(200字)
2.計画変更の要求による対応策及び変更内容・・・設問イ(800字以上1,600字以内の指示に対して、1,200字を想定)
2.1.機会を生かす対応策(400字)
2.2.脅威を抑える対応策(400字)
2.3.確定させた計画変更の内容(400字)
3.計画変更の実施の状況と事業環境の変化への対応の評価・・・設問ウ(600字以上1,200字以内の指示に対して、800字)
3.1.計画変更の実施の状況(400字)
3.2.事業環境の変化への対応の評価(400字)
どうでしょう。凡そのバランス、こんな感じではないでしょうか。
では問い本文をざっと見ていきましょう。
冒頭、おもむろに「システム開発プロジェクトでは、事業環境の変化に対応して、PTの外部のステークホルダからプロジェクト実行中に計画変更の要求を受けることがある」と始まります。
「事業環境の変化」「PTの外部」「プロジェクトの実行中」「計画変更の要求」あたりがキーワード、つまり論文中にうまく具体例を盛り込む必要がありそうというところが分かってくると、問いを読んでいるうちにプロットが浮かんできますね。
続いて「計画変更には、プロジェクトにプラスに作用する機会とマイナスに作用する脅威がある。計画変更を効果的に実施するには機会を生かす対応策と脅威を抑える対応策の策定が重要」と来ます。
ここらへんは、先程組み立てたプラットの2=設問イにマッピングされていますね。
さて、この次のパラグラフは具体的な事例です。冒頭の第1パラグラフで挙げたキーワードと相対しているのを確認しながら読み進めてみましょうか。
・事業環境の変化=競合相手が同種の新機能を提供することを公表
・PT外のステークホルダ=営業部門
・プロジェクト実行中=推進中のPT
・計画変更の要求=リリースの早期化
・プラスの作用=短期開発の挑戦がメンバの成長につながる
・マイナスの作用=スケジュールの見直しによるPTの混乱、生産性の低下
いかがでしょうか。
問い本文自体も、【主張・定義 → 具体例】、つまり「〇〇である。例えば、~」という論文の基本が踏襲されていますね。設問ア~イとの平仄も取れています。うまくご自身の事例が思いつけば、結構簡単な問題かなと思います。
さて、具体例についてですが、本来は「事業環境の変化」に応じて「計画変更の要求」が決まるものなのですが、具体例を浮かべるには逆に「計画変更の要求」を決めてしまうほうがいいかなと思います。
「計画変更の要求」は①リリースの早期化(問いの例ですね)、②機能の追加、③開発コストの削減のどれかでしょうが、①、②が無難ですかね。
開発コストの削減を選ぶと、「事業環境の変化」で(例えば)「会社の経営が苦しくって」なんて書かなくてはいけなくなります。これは「事業環境」というよりも「経営環境」ですよね。ですので「リリースの早期化」、「機能の追加」あたりで。
PT外のステークホルダが「早く使いたい」か「あれもこれも使いたい」という要求をしてきたとなる訳です。ここでは無難に問い本文の例と同じだとつまらないので②機能の追加にしてみましょう。
続いて、「環境変化」ですが、通常ではプロジェクト計画の変更を強いる外部環境の変化は、①法制度の変更(会計制度とか品質保証とか)、②アーキテクチャの耐用年数(サーバの保守切れとか)あたりがテッパンです。今回の問いの事例である③競合他社の動向、というのもナルホドですね。
で、今回の設問では単なる外部環境の変化ではなく、「事業」の環境変化である必要があります。ということで②はなしかな。ということで(③は問いの事例なので)①法制度の変更にしてみますね。
では、プロットに当てはめてみましょう。
1.私が携わったシステム開発プロジェクトの概要と目的
1.1.プロジェクトの概要と目的
・コンシューマ向け白物家電の生産ラインを管理する工程管理システムの再構築
・生産計画に関する情報の共有により、人員の配置や工程の段取りを最適化することを目的
・ラインの一部自動化も行い、省力化も目的
1.2.計画変更の背景となった事業環境の変化
・製造者責任の観点から工程管理の中で品質保証の証跡が必要な法規制の可能性が出てきた
1.3.外部ステークホルダーから受けた計画変更の要求の内容
・法務部門から証跡帳票の出力要請が来た
・監督省庁からの情報により、法制度施行時には必要
・法務セクション担当役員からの要請。経営層も合意済み
2.計画変更の要求による対応策及び変更内容
2.1.機会を生かす対応策
・帳票出力機能の追加は要求仕様段階から法務セクションと連携。他部との連携事例増
・法制度の観点から必要事項は明確。若手・新人の設計能力向上に寄与
・PG工程の外注化実施。新たに選定した外部ベンダの能力探索の一助に
2.2.脅威を抑える対応策
・プロジェクト推進上、段階リリース要
・追加機能の加発によりコスト増加となり脅威に対し、一部機能の次期開発(次年度)への先送りを要件等
2.3.確定させた計画変更の内容
・法制度上、必要な帳票から暫時リリース
・年度帳票、決算棚卸帳票などは稼働後1年後で良いことを確認
・当初の目的であった工程自動化は次期開発へシフト
3.計画変更の実施の状況と事業環境の変化への対応の評価
3.1.計画変更の実施の状況
・PT内で策定した変更計画書は、PT外のステークホルダにも説明。経営の承認を持って決定。
・変更後の計画推進は経営層にも逐次報告。また外部環境である法施行のタイミングも注視
・変更後の計画も予定実績管理を徹底。進捗上、問題なし
3.2.事業環境の変化への対応の評価
・進捗問題なし
・PT内モチベーション向上
・他部門との密な連携
・法制度の対応の完遂。併せて当社製品の品質保証プロセスの向上を製品のアピールにも繋げている
ふ~、いかがでしょうか。具体例の盛り込みがまだまだ弱いとは思いますが、皆さんの(反面教師としてもw)学習の一助になりましたら。今回は「法制度とからめての工程管理」をテーマにしましたが、具体例=ご自身の担当したプロジェクトの概要をいかに深めておくか、品数を増やしておくかがカギですね。実績が足りない方は是非、こちら日経コンなどで事例を読み込んでご自身のモノにするとよいかと思います。